この記事でわかること
- 「NISA満額」ではなく、家計の余剰資金から運用額を決める実務的な考え方
- 生活防衛資金・教育費・住宅費を踏まえた、子育て世代のお金の優先順位
- 夫35歳・妻34歳・子ども2人世帯のモデルケースで見る具体的な運用額の目安
「NISAを始めたいけれど、月いくら積み立てればいいんだろう?」
「同世代の人は満額(年360万円)使っているのかな?うちは無理だけど…」
「教育費もこれからかかるし、住宅ローンもある。運用に回していいお金がどれくらいなのか、自分でもよくわからない。」
子育て世代の方からご相談を受ける中で、こうした声をよくお聞きします。こんな気持ち、よくわかります。
情報があふれている時代だからこそ、「NISA満額を埋めるべき」「月10万円積み立てている人もいる」といった話に触れると、自分の家計が物足りなく見えてしまうこともあるかもしれません。
ただ、まず確認したいのは、運用額は「制度の上限」や「他人の金額」から決めるものではない、ということです。大切なのは、ご家庭の家計の中で「無理なく続けられる金額」を見極めること。今回は、その考え方を一緒に整理していきましょう。
公的な仕組みの確認
まずは、客観的な数字から家計の全体像を見ていきます。
家計の収支(総務省「家計調査」2024年)
- 二人以上世帯の消費支出:月平均 約30万円
- 勤労者世帯の実収入:月平均 約63.6万円
- 二人以上世帯の貯蓄現在高:平均 1,984万円・中央値 1,114万円(高額の貯蓄を持つ世帯が平均値を押し上げているため、実感に近いのは中央値の方かもしれません)
家計の貯蓄行動(J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査2024年」)
- 二人以上世帯の年間手取り収入:平均555万円、中央値500万円
- 金融資産保有額(保有世帯):平均1,374万円、中央値350万円
- 年間手取り収入から貯蓄に回した割合:平均17%
NISA制度(金融庁・2024年新NISA)
- つみたて投資枠:年120万円(月10万円)
- 成長投資枠:年240万円
- 生涯非課税保有限度額:1,800万円
- 非課税保有期間:無期限
注目したいのは、平均で手取りの17%を貯蓄に回しているという数字です。手取り月35万円のご家庭であれば、月約6万円が一つの目安になります。NISAのつみたて投資枠は月10万円まで使えますが、必ずしも上限を埋めることがゴールではないことが見えてきます。
FPとしての考え方の整理
一般的な目安として、運用額を決める順序は次のようになります。
【優先順位】
- 生活防衛資金を現金で確保する(生活費の6か月〜1年分)
- 5年以内に使う予定のお金(教育費・住宅頭金など)は預貯金や個人向け国債など元本確保型で
- 5年以上使わない余剰資金を運用に回す
FPの視点では、「いくら運用できるか」よりも、「いくらまでなら長期で動かさずに置いておけるか」を見極めることが大切だと考えています。短期で取り崩す可能性のあるお金を運用に回してしまうと、ちょうど相場が下がっているタイミングで売却することになる場合もあるからです。
もちろん、ご家庭によって考え方は変わります。収入の安定性、共働きか片働きか、住宅ローンの有無、ご両親からの援助の見込みなど、変数は多くあります。大切なのは金額そのものよりもバランスです。
具体的なモデルケース
ここでは、こんなご家庭を想定して考えてみます。
【モデルケース】
- 夫35歳・会社員・年収500万円
- 妻34歳・パート勤務・年収120万円
- 子ども2人(8歳・5歳)
- 世帯手取り:約500〜550万円/月約35万円(ボーナス含む)
- 月の消費支出:約30万円
ステップ1:生活防衛資金の確保
月の生活費30万円 × 6か月 = 180万円
共働きで収入源が分散しているため、6か月分を目安に。片働きであれば12か月分(360万円)を目安にすることが多いです。
ステップ2:教育費の山を見据える
文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」によると、1年あたりの学習費総額は、小学校(公立)約33.6万円、中学校(公立)約54.2万円、高校(公立)約59.8万円。中学・高校と進むにつれて教育費の負担が大きくなります。
さらに、上のお子さんは10年後に大学進学。JASSO「令和4年度 学生生活調査」では、大学昼間部の年間学生生活費(学費+生活費)は平均約180万円前後で、4年間で約700万円が一つの目安です。
ステップ3:月の余剰資金から運用額を決める
- 月の手取り35万円 − 消費支出30万円 = 月5万円
- ボーナスや残業代を加味すると、月5〜8万円が貯蓄余力の目安
このうち、生活防衛資金が貯まるまでは現金中心、防衛資金が確保できたら月3〜5万円程度をNISAのつみたて投資枠で運用、というのが一つの形です。
【参考試算:NISAつみたて投資枠 年率4%想定】
(金融庁の長期分散投資に関する資料を参考に、年率4%で試算したケースです)
- 月3万円×18年 = 元本648万円 → 約990万円
- 月5万円×18年 = 元本1,080万円 → 約1,650万円
※あくまで想定利回りでの試算です。将来の運用成績を保証するものではありません。 元本割れのリスクもあります。
よくある誤解・注意点
誤解1:「NISAは満額(年360万円)を埋めるべき」
こう思っている方が多いですが、実は制度の上限と家計の余裕は別物です。満額を意識して家計を圧迫してしまうと、途中で取り崩すことになる場合もあります。余剰資金から逆算するのが原則です。
誤解2:「子育て中は運用しない方がいい」
こう思っている方も多いですが、教育費の山まで5年以上ある資金や、老後資金として15年以上動かさないお金であれば、運用の対象期間として活用できる可能性があります。時間が長いほど、複利(利益が次の利益を生む雪だるま式の効果)を活かしやすくなります。
誤解3:「貯金だけしておけば安心」
日本銀行の資金循環統計(2025年)によると、家計金融資産2,286兆円のうち現預金比率は49.1%。現金は安心感がある一方で、インフレ(モノの値段が上がり、相対的にお金の価値が下がること)が続くと、同じ金額で買えるモノが少なくなることもあります。「貯金か運用か」の二択ではなく、両方をバランスよく持つ視点が大切です。
確認してほしい3つのポイント
- 生活防衛資金は確保できていますか?
月の生活費の6か月分(共働き)または12か月分(片働き)が、すぐに使える預貯金にあるか確認してみてください。
- 5年以内に使う予定のお金を「運用」と混ぜていませんか?
教育費・住宅頭金・車の買い替えなど、近い将来に使う予定のあるお金は、運用とは別の口座で管理することをおすすめします。
- 月の貯蓄余力を「見える化」できていますか?
手取り収入から固定費・変動費を引いて、毎月いくら残るのかを把握することが第一歩です。そのうえで「貯蓄」と「運用」の配分を考えていきます。
まとめ+次のステップへの導線
【今日のまとめ】
- 運用額は「制度の上限」や「他人の金額」ではなく、家計の余剰資金から決める
- 優先順位は「生活防衛資金 → 近い将来の支出 → 5年以上使わないお金の運用」
- 子育て世代のモデルケースでは、月3〜5万円のNISA積立が一つの目安(ご家庭により異なります)
判断する前に全体像を見ておくことが大切です。「うちの場合はどう考えればいい?」と感じた方は、まず気軽な一歩から始めてみてください。
- まず気軽に情報収集したい方へ:のどかFP事務所の公式LINEで、家計や運用についての情報を発信しています。ホームページからご登録いただけます。
- 具体的に整理したい方へ:無料相談はこちら からお気軽にお問い合わせください。ライフプランの「見える化」を一緒に進めていきます。
のどかFP事務所からの一言
「いくら運用すればいいか」という問いに、唯一の正解はありません。同じ年収・同じ家族構成でも、価値観や将来の希望によって、選ぶ道筋は変わってきます。
私たちFPの役割は、商品をおすすめすることではなく、ご家庭の全体像を一緒に「見える化」して、ご自身が納得して選べるようにお手伝いすることだと考えています。
「我が家にとって、ちょうどいい運用額っていくらだろう?」
そんな問いを、一緒に考えてみませんか。
出典一覧
- 総務省統計局「家計調査(2024年)」 https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2024.pdf
- 金融広報中央委員会(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2024年(二人以上世帯)」 https://www.j-flec.go.jp/data/kakekin_2024/
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」(2024年12月) https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00002.html
- 日本学生支援機構(JASSO)「令和4年度 学生生活調査」 https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/
- 住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」 https://www.jhf.go.jp/files/a/public/jhf/400374389.pdf
- 金融庁「新しいNISA」 https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/
- 日本銀行「資金循環統計(2025年)」 https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sj.htm
※本記事内の試算は一定の前提に基づく参考値であり、将来の運用成績を保証するものではありません。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な判断はご自身の責任のもとで行ってください。


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