この記事でわかること
・親の終活で、子ども世代がいちばん困るのは「税金」ではなく「探すこと」だという事実
・元気なうち → 見える化 → もしものとき、という”対策の正しい順番”
・今日、親と話すだけでできる「最初の一歩」
「親の終活、気になってはいるけれど…」
「縁起でもない気がして、なかなか切り出せない」
「そもそも、何から手をつければいいのか分からない」
こんな気持ち、よくわかります。
終活というと「親世代が自分のために準備すること」というイメージがあります。でも実際に「準備しておいてよかった」「しておけばよかった」と痛感するのは、多くの場合、残された子ども世代です。
そして、いざというときに子どもがいちばん苦労するのは、相続税の計算ではありません。「親の財産が、どこに、いくらあるのか分からない」という、もっと手前のところなのです。
公的な仕組みの確認
まず、知っておくと安心な「土台」を整理します。
お金が動かせなくなるタイミングは2回ある
ひとつは「亡くなったとき」。銀行が死亡を把握すると口座は凍結され、相続手続きが終わるまで引き出せなくなります。ただし2019年7月から、葬儀代などのために1つの金融機関あたり上限150万円まで(残高×1/3×法定相続分の範囲内)は単独で引き出せる「預貯金の払戻し制度」ができています(全国銀行協会)。
もうひとつは、意外と知られていない「認知症になったとき」。判断能力が低下すると、本人名義の預金の引き出しや解約ができなくなります。認知症の人が持つ金融資産は大きく、2030年には約215兆円(家計金融資産の約1割)に達するとの試算もあります(第一生命経済研究所の試算/日本経済新聞)。
「うちは相続税がかかる?」の目安
相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以下なら原則かかりません(国税庁)。たとえば相続人が3人なら4,800万円まで。多くのご家庭はこの範囲に収まります。
ここで大切なのは、「相続税がかからない=手続きが楽」ではないということ。税金がかからなくても、口座の解約や名義変更などの手続きは必ず発生します。
FPとしての考え方の整理
ご家庭によって事情は違いますが、FPの視点では、親の終活は3つの順番で考えると整理しやすくなります。
【元気なうち】 → 【見える化】 → 【もしものとき】
認知症・介護の備え 財産・契約の棚卸し 相続・手続き
ポイントは、「元気なうちにしかできないこと」から考えることです。
任意後見・家族信託・遺言・口座凍結対策といった「契約系の備え」は、本人に判断能力があるうちにしか結べません。認知症が進んでからでは、選べる手段が「法定後見」だけになり、自由度も下がってしまいます。
つまり、いちばん後回しにされがちな「元気な今」が、実はいちばん動く価値が高い時期なのです。
具体的なモデルケース
たとえば、こんなご家族で考えてみます。
- 子(あなた):38歳・会社員・親と離れて暮らす
- 父:70歳・年金生活・持ち家あり・通帳が複数、加入保険は本人も把握しきれていない
- 母:68歳・健在
ある日、お父さまが入院。幸い大事には至りませんでしたが、退院後に少しずつ物忘れが増えてきました。「介護が必要になったらどうしたい?」と聞こうとしたときには、もう本人の希望をはっきり確認できなくなっていた——。
→ この場合、まず課題になるのは「親の希望を聞けるうちに聞いておくこと」です。在宅で過ごしたいのか、施設でもよいのか。これは元気なうちにしか聞けません。
そして介護にかかる費用の目安は、公的な調査では一時費用 約47万円+月々 約9万円、期間は平均4年7か月で、総額の目安は約540万円(生命保険文化センター 2024年度調査)。在宅か施設かで月々の負担は大きく変わります。公的介護保険で自己負担は原則1〜3割なので、全額自費ではありません。
「いくらかかるか分からない」という漠然とした不安は、目安を知るだけで「準備できる課題」に変わります。
よくある誤解・注意点
誤解①「相続税がかからないなら、何もしなくていい」
→ 税金とは別に、口座解約・不動産の名義変更・遺産分割協議などの手続きは必ず発生します。大変なのは税金ではなく「探す・集める」ことです。
誤解②「親の財産は、亡くなってから調べればいい」
→ ネット銀行・ネット証券は郵便物が来ず、存在に気づけないことがあります。スマホが開けず、サブスクが解約できないまま課金が続くケースも。元気なうちの「見える化」が、後の負担を大きく減らします。
誤解③「認知症になっても、家族ならお金をおろせる」
→ 原則できません。本人の意思確認ができないと、金融機関は引き出しや解約に応じません。だからこそ、任意後見・家族信託・代理人カードといった備えは”元気なうち”が前提になります。
確認してほしい3つのポイント
- 親が「どの銀行・どの証券会社・どの保険会社」を使っているか、”在りか”だけでも聞いてみる(金額まで聞かなくてOK)
- 「もし介護が必要になったら、どこで過ごしたい?」と、希望をひとつだけ聞いてみる
- 親のスマホがもしものとき開けるか(パスコードの在りか)を、それとなく確認しておく
どれも「制度を学ぶ」より前にできる、会話からの一歩です。
まとめ+次のステップへの導線
- 親の終活で子が困るのは、税金より「探すこと・集めること」
- 対策には順番がある。元気なうち → 見える化 → もしものとき
- 最初の一歩は、難しい手続きではなく「親と話すこと」
→ もっと具体的に知りたい方は、関連記事「親の財産の棚卸し」「デジタル終活」「認知症と資産凍結への備え」もあわせてどうぞ(※内部リンク予定)。
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のどかFP事務所からの一言
のどかFP事務所は、保険や金融商品を販売しない、完全独立系のFPです。だからこそ、「どの備えがご家族に合うか」を中立な立場で一緒に考えられます。
終活は、不安をあおられて急いでやるものではありません。「大切なひとの未来を明るくする」ための、前向きな準備です。まずは肩の力を抜いて、親御さんと一度お茶でも飲みながら話してみることから。その一歩を、私たちがそっと伴走します。


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