この記事でわかること
- 年金の繰下げ受給で、いくら増えるのか(0.7%×月数のしくみと具体額)
- 「何歳まで生きれば得か」の目安(損益分岐点の考え方)
- 増額の数字だけで決めないための、見落としがちな3つの注意点
「繰下げると増えるらしいけど、結局どうなの?」
「年金は遅くもらうと増えるって聞くけど、実際いくら?」
「70歳とか75歳まで待って、もし早く亡くなったら損なんじゃ…」
「親が繰下げを考えているみたいだけど、なんて声をかけたらいい?」
こんなモヤモヤ、よくわかります。
繰下げ受給は「増える」という部分だけがひとり歩きしがちですが、実は判断の軸はシンプルです。まず確認したいのは「いくら増えるか」と「何歳まで受け取れば追いつくか」の2つ。ここを見える化すれば、ご自身にも親御さんにも、落ち着いて考える土台ができます。
まず、公的なしくみを確認しましょう
老齢年金は、受け取り始める時期を65歳より後ろにずらすことができます。これが「繰下げ受給」です。
日本年金機構によると、繰下げ受給では 1か月遅らせるごとに年金額が0.7%増える しくみになっています。令和4年(2022年)4月からは繰下げの上限が 75歳 まで広がりました。
- 66歳0か月まで繰下げ:8.4%増
- 70歳0か月まで繰下げ:42%増
- 75歳0か月まで繰下げ:84%増(最大)
しかも、いちど増えた率は一生続きます。長生きするほど、増額の効果が積み上がっていくイメージです。
出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」/厚生労働省「老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給」
FPの視点:「増額率」より「追いつく年齢」で見る
一般的な目安として、繰下げの判断は「何%増えるか」だけでなく「増えた金額で何年受け取れば、65歳から受け取った場合の累計に追いつくか」で見ると、ぐっとわかりやすくなります。
額面(税引き前)で単純計算すると、繰下げは 受け取り始めてからおよそ12年 で、65歳受給の累計に追いつきます。ご家庭によって条件は変わりますが、判断の入り口としてこの「12年」を覚えておくと迷いにくくなります。
具体的なモデルケースで見てみましょう
65歳から受け取れる老齢年金が 年180万円(月15万円) の方を例にします。
- 65歳から受給:年180万円
- 70歳まで繰下げ(+42%):年約255.6万円(月約21.3万円)→ 累計が65歳受給に追いつくのは およそ82歳ごろ
- 75歳まで繰下げ(+84%):年約331.2万円(月約27.6万円)→ 追いつくのは およそ87歳ごろ
つまり、この分岐点より長生きするほど繰下げが有利に、早く受け取り始めたほうが手元の余裕は早く生まれる、というバランスの問題になります。「正解」ではなく、健康状態や働き方、他の収入とのバランスで選ぶもの、と考えるのが自然です。
※これは額面ベースの単純な試算で、将来の受取総額を保証するものではありません。
よくある誤解・注意点
誤解①「増額率がそのまま手取りの増加になる」
→ 実は、年金額が増えると所得税・住民税や社会保険料(国民健康保険料・介護保険料など)の負担も増えることがあります。手取りベースだと、追いつく年齢は額面より少し後ろにずれる場合が多いです。
誤解②「繰下げれば、すべての年金が同じように増える」
→ 配偶者がいる方に上乗せされる「加給年金」は、繰下げ待機中は受け取れず、増額の対象にもなりません。対象になると年約40万円になることもあり、ここは見落としがちなポイントです。
誤解③「基礎年金と厚生年金はセットで繰下げるしかない」
→ 実は、老齢基礎年金と老齢厚生年金は 別々に 繰下げできます。「厚生年金は65歳から受け取り、基礎年金だけ繰下げる」といった調整も可能です。
確認してほしい3つのポイント
- まずは「ねんきんネット」で、65歳時点の見込み額を見るだけ。 これだけで、繰下げを考える土台ができます。今日できる、いちばん小さな一歩です。
- (余裕があれば)配偶者の「加給年金」の対象になりそうか確認してみる。ここが繰下げ判断の分かれ目になりやすいところです。
- (余裕があれば)70歳・75歳まで繰下げた場合の増額後イメージを、ざっくり計算してみる。
「全部やらなきゃ」と思わなくて大丈夫です。まずは見込み額を見るところから。実はそれだけで、判断の半分はもう進んでいます。
まとめと、次の一歩
- 繰下げは1か月0.7%増、最大75歳まで(最大84%増)で、増えた率は一生続く
- 額面ではおよそ12年(70歳繰下げで約82歳、75歳繰下げで約87歳)が追いつく目安
- 手取りや加給年金まで含めて、ご家庭のバランスで考えるのが大切
年金の繰下げは「早くもらう・遅くもらう」に正解があるわけではなく、健康・働き方・ご家族の状況で答えが変わるテーマです。
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のどかFP事務所からの一言
私たちは、特定の保険や金融商品を販売しない、完全に中立的な立場のFPです。だからこそ「繰下げたほうがいい」「早くもらったほうがいい」と決めつけることはしません。
大切なのは、数字を正しく見える化して、ご自身が納得して選べること。もしよければ一度、こんな問いから考えてみませんか——「あなたにとっての“ちょうどいい受け取り方”は、どんなかたちでしょう?」
出典一覧
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
- 日本年金機構「繰下げ増額率早見表」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.files/hayamihyo.pdf
- 日本年金機構「令和4年4月から繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられました」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/0401.files/01_0401kurisage.pdf
- 厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第11 老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給」 https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_011.html
本記事は制度の一般的な解説であり、個別の受給判断を保証・推奨するものではありません。試算は額面ベースの概算です。


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