この記事でわかること
1. 給付型奨学金は「子ども本人のアルバイト収入」も判定に関わる、という見落としやすい仕組み
2. 「住民税の壁」「均等割」「所得割」「勤労学生控除」など、税の用語と気をつけたいポイント
3. 預貯金やNISAも対象になる「資産基準」の考え方と、ご家庭でまず確認したいこと
「うちは大丈夫だと思っていたのに…」というお声、よく伺います
進学を控えたお子さんを持つご家庭から、こんなご相談をいただくことがあります。
- 「給付型奨学金を申請したら、思っていた区分より支援が少なかった」
- 「子どものアルバイト代が、まさか奨学金に影響するなんて知らなかった」
- 「預貯金にも基準があると後から知った」
教育費の準備をしっかりされているご家庭ほど、「制度の細かい条件」までは手が回らないものです。こんな気持ち、よくわかります。今回は不安を煽るためではなく、「知っておけば落ち着いて準備できる」注意点を整理していきます。
まずは公的な仕組みの確認:高等教育の修学支援新制度
まず確認したいのは、国の「高等教育の修学支援新制度」です。大きく2つの支援がセットになっています。
- 授業料・入学金の減免(学校に納めるお金が一定額まで安くなる)
- 給付型奨学金(返さなくてよい奨学金)
対象は大学・短大・高専・専門学校。世帯の収入に応じて第Ⅰ〜第Ⅳ区分に分かれ、支援の割合が変わります(第Ⅰ=満額、第Ⅱ=3分の2、第Ⅲ=3分の1、第Ⅳ=4分の1)。
授業料等減免の上限(年額・目安)は、国公立で授業料54万円+入学金28万円、私立で授業料70万円+入学金26万円です。
支援区分は、前年(1〜12月)の所得をもとにした住民税の情報で、毎年秋ごろに見直しが行われます。急な収入減があった場合は「家計急変採用」が随時受け付けられています(くわしい時期や手続きは公式サイトでご確認ください)。
(出典:文部科学省 高等教育の修学支援新制度/JASSO 在学採用の家計基準。最新の制度内容は公式サイトでご確認ください)
FPの視点で整理する「給付型ならではの注意点」
FPの視点でまずお伝えしたいのは、給付型奨学金は「貸与型」と判定のしかたが違うということです。
- 貸与型(返す奨学金):原則として親(生計維持者)の収入で判定
- 給付型(返さない奨学金):本人と親、それぞれの住民税の情報をもとに判定
つまり、お子さんのアルバイト収入が一定額を超えて本人に住民税がかかると、世帯全体の判定に影響することがあります。一般的な目安として、ここは見落とされやすいポイントです。ただし、ご家庭によって収入の構成も自治体も異なりますので、大切なのは金額そのものより「全体像を見ておくこと」です。
具体的なモデルケース(母+大学生+高校生の世帯)
イメージしやすいよう、一例で考えてみます。
設定(目安):母(パート・年収280万円)、長女(大学1年・本人)、長男(高校生)の3人世帯
JASSO公式の目安表では、この「本人・母・高校生の3人世帯(給与所得)」のケースで、第Ⅰ区分の年収目安はおおむね約289万円まで、第Ⅳ区分は約677万円までとされています。母の年収280万円なら、第Ⅰ区分(満額)に届く可能性があります。
ところが、ここで長女がアルバイトを頑張り、本人に住民税の「所得割」(所得に応じてかかる住民税)が発生すると、世帯全体の判定に影響し、区分が下がる(=支援が減る)こともあります。実際、JASSOの目安表も「本人に市町村民税が課税されていないものとした場合」という前提で作られています。
数十万円のアルバイト代が、年間の支援額に影響するケースもあり得ます。あくまで目安であり、実際の判定はお住まいの自治体・最新の制度でご確認ください。
(※この試算は一般的な目安で、将来の支援額を保証するものではありません)
よくある誤解・注意点
こう思っている方が多いですが、実は気をつけたい点が3つあります。
誤解1:「子どものバイト代は103万円までなら関係ない」
よく聞く「103万円の壁」は所得税の話です。奨学金で気にしたいのは住民税のほう。2025年度(令和7年度)の税制改正で給与所得控除の最低保障が55万→65万円に上がり、住民税の「所得割」が非課税になる給与収入の目安は、従来の約100万円からおおむね110万円に変わりました。ただし自治体差があり、お住まいの市区町村でのご確認が必要です。
誤解2:「勤労学生控除を使えば住民税は完全にゼロ」
勤労学生控除(働く学生向けの控除。所得税27万円・住民税26万円ほど/最新額は要確認)を使えば「所得割」はゼロにできることがあります。ただし住民税には「均等割」(所得に関係なく定額でかかる部分)もあり、こちらは別の判定です。住民税が課税されている状態だと支援区分の判定に影響しうるため、「控除を使えば必ず大丈夫」とは言い切れない点に注意しましょう。
誤解3:「資産は関係ない」
給付型には資産基準もあります。本人+親の現金・預貯金・有価証券などの合計が5,000万円未満であること(多子世帯の授業料減免を満額受ける場合は3億円未満)。NISAの投資額や退職金は含み、不動産・貯蓄型保険・学資保険は対象外です。
確認してほしい3つのポイント
すぐにできるチェックです。
- お子さんのアルバイト見込み年収を把握する(住民税の目安ラインに近いかどうか)
- お住まいの自治体の「住民税が非課税になる収入ライン」を確認する(均等割・所得割で水準が違います)
- 世帯の預貯金・NISA・有価証券の合計額をざっくり把握する(資産基準の目安と照らす)
まとめと、次のステップ
ポイントを3つに絞ります。
- 給付型奨学金は本人と親、それぞれの住民税の情報をもとに判定される
- 子のアルバイトは「住民税(所得割・均等割)」の観点で見ておくと落ち着いて準備できる
- 預貯金・NISAなどの資産基準もあわせて確認しておく
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(あわせて、本シリーズの[基礎編]「給付型奨学金、いくらもらえる?」、[準備編]「足りない分の埋め方」もご参考ください)
のどかFP事務所からの一言
奨学金の制度は、年々アップデートされています。「子どもに気兼ねなくアルバイトをさせてあげたい」という親心と、「支援をしっかり受けたい」という気持ち。そのバランスのとり方に、唯一の正解はありません。
判断する前に全体像を見ておくと、ご家庭にとって納得のいく選択がしやすくなります。「我が家にとって、何を大切にしたいか」――まずはそこから、ご一緒に考えてみませんか。
出典一覧
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/
- 文部科学省「令和7年度からの多子世帯への授業料等無償化に係るFAQ(PDF)」 https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_gakushi_100001505_2.pdf
- JASSO「給付奨学金 在学採用の家計基準」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/kakei/zaigaku.html
- JASSO「支援区分の見直し(適格認定・家計)」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/saiyochu/kyufu/tekikaku_kakei/tsujo/shienkubun.html
- 国税庁「No.1175 勤労学生控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1175.htm
※本記事の数字は記事作成時点(2026年6月)の目安です。税制・支援制度の最新の内容や、お住まいの自治体ごとの取り扱いは、必ず公式情報・各自治体でご確認ください。記載の試算は将来の支援額や運用成績を保証するものではありません。


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